TAVI（経カテーテル大動脈弁置換術）

TAVI （経カテーテル大動脈弁置換術）施設認定

西宮渡辺心臓脳・血管センターでは、2020年11月より、大動脈弁狭窄症に対する低侵襲なカテーテル治療「経カテーテル大動脈弁置換術（transcatheter aortic valve implantation: TAVI）」の施設認定を受けています。

大動脈弁狭窄症とは

大動脈弁狭窄症は、心臓から血液が送り出される出口に付いている弁「大動脈弁」が硬化し、開きにくくなる病気です。

重症になるまでは症状を自覚しにくい病気ですが、疲れやすさ、息切れといった症状から始まり、進行するにつれて、労作時の息苦しさ、胸の痛み・重苦しさなどが出現・悪化するようになります。さらに悪化すれば、安静時にも呼吸困難感を生じることもあるほか、失神、突然死に至ることもある、とても怖い病気です。
自覚症状に乏しい場合も、無意識のうちに活動をセーブしてしまい症状を自覚していないだけのこともあります。
また、症状が出てくるようになってからの自然予後（薬物治療のみで経過を見た場合の予後）は極めて不良であることが知られており、半数は2年以内に死亡するというデータもあります。

重症大動脈弁狭窄症に対する治療法は？

重症大動脈弁狭窄症に対する治療法には

①保存的治療（薬物治療）、②手術、③カテーテル治療　の3つの選択肢があります。

①保存的治療

薬物を用いて、心臓にかかる負担を取り除いたり、症状の緩和を図ります。しかしながら、悪くなった大動脈弁自体を改善することはできません。

②手術（大動脈弁置換術）

従来からある標準的治療です。人工心肺装置を併用して心臓を一旦止めて、悪くなった弁を切り出して、ウシやブタの生体組織で作られた生体弁や、チタンやパイロライトカーボンなどの素材で作られた機械弁（若年の患者様に用いられることが多いです）に置き換える手術です。
③カテーテル治療（経カテーテル的大動脈弁植え込み術：TAVI）

心臓を開けずに、カテーテルという細い管を用いて人工弁を患者様の心臓に留置する新しい治療方法です。詳細は、次の項をご参照ください。

経カテーテル的大動脈弁植え込み術（TAVI）とは？

日本でも2013年より施行可能となった比較的新しいカテーテル治療です。脚の付け根などの血管からカテーテルを挿入し、折りたたみ式の人工弁を患者様の心臓まで運んで留置する治療です。開胸も心停止も必要としない治療で、傷も小さく、術後のリハビリに要する期間も短いことから、体への負担も小さく、入院期間も短い治療です。

どんな患者様がTAVIの対象となるのか

　以前は、年齢や基礎疾患、免疫抑制剤などの内服、開胸手術歴や放射線治療歴、といった諸々の要因で大動脈弁置換術が困難、あるいは可能であっても比較的リスクが高い患者様が適応とされていましたが、現在は手術低リスクの患者様にも適応が拡大されており、比較的若年の患者様への治療も行われています。また、超高齢の患者様であっても問題なく治療可能です。最終的には、全身状態や併存する心疾患、解剖学的な形態などをよく吟味し、循環器内科医、心臓血管外科医を含む他職種からなるハートチームで協議して治療方針が選択されます。

TAVIのアプローチ部位は？

9割以上は脚の付け根からカテーテルを挿入する「経大腿アプローチ」で治療が行われますが、患者様の血管性状などにより、その他のアプローチ（経鎖骨下動脈、直接大動脈、経心尖など）が選択されることもあります。

手術時間は？

患者様ごとの解剖学的要因やアプローチによっても異なりますが、穿刺で行う経大腿アプローチであれば、手術そのものにかかる時間は概ね45分から1時間程度です。

術後の入院期間は？

疾患背景やリハビリテーションの状況などにもよりますが、3日〜1週間程度となることが多いです。

地域の先生方へ

当院のTAVIに関わるチームも2022年度より新体制となり、積極的に本治療を行っております。
過去に大動脈弁置換術を受けられた患者様の生体弁不全（狭窄、逆流）に対するTAVI（TAV in SAV）も当院で施行可能です。
診断や治療の適応に迷われている患者様などもおられると思いますが、受診していただければ各種検査を行い評価させていただきますので、いつでも気軽にご紹介ください。
また、全身状態や心不全が不安定で入院中の患者様につきましては転院での受け入れも可能ですので、ご連絡ください。