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不整脈科について

不整脈とは?

心臓は規則正しく拍動し、全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。
このポンプは電気で動いていて、この電気が流れる経路に異常が生じると心臓全体に電気がうまく伝わらないため心臓の動き(心拍)が乱れることを不整脈と呼んでいます。
不整脈の症状として、心拍が速くなると強い動悸や胸部不快感、胸痛などが出現する時があります。また、逆に心拍が遅くなると疲労感、めまいや胸痛、ひどい時には意識を失うこともあります。

不整脈にはいろいろ分類がありますが、大きく分けると心拍が遅いものを徐脈性不整脈、心拍が速いものを頻脈性不整脈と呼びます。

 

 

徐脈性不整脈の治療

徐脈性不整脈では、心臓の打つ回数(心拍)が少なくなるため日常生活中に息切れや倦怠感を感じることがあります。
この徐脈性不整脈の主な原因は、電気の流れが悪くなった場合や、電気刺激の機能そのものが低下したためです。
先ほどの自覚症状がない場合は経過観察できますが、人工的に心臓への電気刺激を補う心臓ペースメーカーを植え込みが必要となることがあります。

 

皮下植込み型ペースメーカーについて

ペースメーカーとは、電池とコンピューターが内蔵された金属製の本体と電線(リード)からなります。リードは患者さんの状態に応じて1本ないし2本使用します。
このリードを心臓の中の右上の部屋(右心房)と右下の部屋(右心室)にそれぞれ留置してペースメーカーの本体に繋ぎます。
ペースメーカー本体の留置場所は、通常左胸(左鎖骨のやや下付近)です。留置方法は、左胸の鎖骨下付近に数cm切開し、皮下にポケットを作成し、その中に本体を留置します。
ペースメーカーは心臓に留置されたリードを用いて心臓の動きを感知し、もし適切に動いていない場合は、ペースメーカー本体が判断して心臓に電気刺激を伝えます。
ペースメーカー本体の重さはおおよそ20g程度で、電池の寿命はペースメーカーの作動率にもよりますが、おおよそ5〜10年程度です(電池が改良されていますので10年以上もつものもあります)。
電池寿命がくればペースメーカー本体の交換が必要です(充電式はありません)。

リードレスペースメーカー

 2017年9月より日本で使用が可能になったペースメーカーです。
従来のリードを用いて、皮下に植え込むペースメーカーと異なり、直接心臓に植え込みます。
直接心臓に植え込むためリードが必要ない(リードレス)ためリードの破損や脱落などがありません。
また、皮下にポケットを作成する必要もないためポケット作成に関連した感染症も起こりません。
また、外から見ても全くペースメーカーが挿入されているかどうかもわかりませんので美容上の利点もあります。

最近は、心房の動きを感知する機能がついたものも登場しています。

ただ、心室にしか植え込めないこと、ペースメーカーの電池寿命がきても取り出せないため追加の挿入しかできないなどの課題もあります。

 

特殊なペースメーカー

植込み型除細動機能付きペースメーカー(ICD)

心筋梗塞や心臓の筋肉にトラブルがあるなどして心臓の機能が低下した場合に心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)が起こることがあります。
これらの不整脈は致死性不整脈と呼ばれ、できるだけ速く治療を行わないと生命が危険となります。
治療は、電気的除細動(電気ショック)しかありません。そこでこの不整脈が起こったらいち早く感知し、電気ショックを行うペースメーカー(ICD)が開発されました。
ICDはペースメーカーの機能と電気ショックの両方の機能を持ったものですので基本はペースメーカーと同じ、金属製の本体とリードからなります。
リードは電気ショックを出すことのできる特殊なリードを使用します。
また、ペースメーカーの本体は電気ショックを出すために大型の電池とコンデンサーが必要になるため通常のペースメーカーと比較してかなり大きくなります。

 

S-ICD

 通常のペースメーカーのリードと比較してICDのリードは太く、破損(折れたり、切れたり)しやすいものでした。
リードが破損した場合は、心臓の中に
留置された期間が長いと心臓とリードが癒着するため抜去するのも容易ではありません。
また、抜去するのではなく、追加でリードを留置する場合も心臓の負担も大きく、心臓機能の低下する可能性があります。
そこで心臓にリードを直接留置せず、心臓の周囲の皮下にリードを留置して電気ショックが行える除細動器(S-ICD)が開発されました。
このS−ICDは、心臓の周囲の胸骨にそってリードを挿入し、本体は胸部の左側(心臓の高さぐらいの位置)に挿入します。
皮下にリードを挿入しているため、もしリードが破損しても取り出すことは比較的容易です。
ただし、リードは心臓内に留置されていないためペースメーカーとしての機能はありませんし、本体のサイズが通常のICDよりは大きいです。

 

心臓再同期療法

 心筋梗塞後や心筋症など心臓の筋肉にトラブルが起こった場合、心臓のポンプとしての機能が低下してしまいます。
心臓のポンプ機能が低下する原因の一つに心臓の筋肉の収縮するタイミングがばらばらになって効率的に動けなくなっている状態があります。
これをペースメーカーからの電気刺激を使ってバラバラになった心臓の動きをもう一度整えようとする治療法を心臓再同期療法(CRT)と呼びます。
心臓再同期療法を行う場合は、通常心室に1本のリードを右心室に挿入しますが、もう1本を冠静脈洞という心臓の血管を通して左心室側に挿入します。
この2本のリードから心室に電気刺激を行うことでばらばらになった心臓の動きを再度整えます。

 

 

頻脈性不整脈の治療

頻脈性不整脈の主な原因は(1)電気刺激の経路に余分な電気刺激を発生する部位が出来たり、(2)正常の伝導路とは別の伝導路が存在することでそこで電気刺激が渦を巻いたりすることで心拍が速くなるのです。

この不整脈の治療は、以前は胸を開けて直接心臓の不整脈の原因となる部分に治療を行っていました。これは患者さんにとても大きな負担がかかる大変な治療でした。
また、薬による治療もありますが、これは薬によって不整脈を起こりにくくするだけで根本的に不整脈を治療することはできません。そのため薬を継続的に内服してもらう必要がありますが、長期間の内服は副作用の問題も懸念されます。
つまり以前は、薬の副作用を気にしながら薬で様子をみるか、思い切って心臓外科手術を受けるのかという選択を迫られていました。

 そこで登場したのがカテーテルを使って治療する技術です(カテーテルアブレーション:カテーテル心筋焼灼術)。
この治療法は、カテーテルと呼ばれる直径2mm程度の管を大腿部から心臓内に挿入して、不整脈の原因となる電気回路の部分を探しだし、その回路を遮断する治療法です。言い換えるとカテーテルという道具を用いて電気で動いている心臓の電気工事を行うのです。この治療がうまく行けば不整脈は治る可能性があり、内服薬の中止または減量できることもあります。
つまり、薬物治療は不整脈の症状を緩和することを目的とした治療法ですが、カテーテルアブレーションは不整脈の根治を目指す治療法です。

 

 

頻脈性不整脈の種類

発作性上室性頻拍(房室結節回帰性頻拍、房室回帰性頻拍、心房頻拍、上室性期外収縮)
・心房粗動
・心房細動
・心室頻拍/心室性期外収縮
・心室細動

心室細動以外は、カテーテルアブレーションで治療対象となる主な不整脈です。
この中で一番患者さんが多い不整脈は心房細動です。

 

心房細動

心房内で電気刺激が嵐のようにあちこちで起こり、その電気刺激で心房が細かく動く(細動)不整脈です。
心房が不規則に興奮するため心房内に血の塊(血栓)ができやすく、この血栓が血流に乗って流れ、他の臓器で詰まってしまう(塞栓症:例 脳梗塞など)ことがある怖い不整脈です。
また、不規則にたくさん動くため心臓のポンプとしての機能が低下して心不全になったりします。

この不整脈が起こってしまう原因は高血圧や糖尿病の他に年齢も関わっています。未曾有の高齢化社会を迎える現代で心房細動の患者さんが年々増加していくことが大きな問題となってきています。
脳梗塞や心不全を引き起こす怖い不整脈ですが、長年なかなか治すことが困難な不整脈でした。
しかし、近年技術の進歩とともに治すことのできる不整脈の一つとなってきました。

この不整脈が起こる原因は、心臓に繋がっている血管(主に左心房とつながっている肺静脈)と心臓との繋ぎ目からたくさん電気刺激が心臓内に入ってくることで起こります。
つまり、この電気刺激が心臓内に入ってこないようにすること(電気的隔離術)で治療を行います。うまく遮断できれば心房細動が起こらなくなります。電気刺激を遮断する方法としては、一般的には高周波を用いて焼灼する方法と、液化亜酸化窒素ガスを用いたバルーンで冷却をする方法やレーザーで焼灼する方法など新しい技術が出てきています。

 

 

当センターでの取り組み

不整脈は、自覚症状のないもの、突然始まる動悸や死に至らしめるものまで様々存在します。そのため一つ一つの不整脈を丁寧に診断し、治療していく努力が必要です。
その中でも治療を補助する道具や熟練したスタッフの重要性はますます高くなってきています。

当センターでは、カテーテルで取得した不整脈の情報とカテーテルの正確な位置情報をコンピューター上に表示することができる最新のカテーテルのナビゲーションシステム(CARTO3®)を用いて、より安全により確実に治療ができるように努めています。
また、治療する上でも必要不可欠なX線装置も最先端の超低線量アンギオ装置(Artis Q.zen®)を導入し、患者様の被曝量にも細心の注意を払っています。
最新が最善ではありませんが、より良いと考えられる最新の技術や道具を積極的に導入しています。

しかも、これらの最新の道具に加えて、特に不整脈診療では医師一人だけの力では治療はできません。
当院ではこれらの最新の道具を操作する熟練した臨床工学技士さんや看護師さんなどのスタッフと共にチームで不整脈診療を行っています。

チームのみんなで力を合わせ、一人でも多くの患者さんを不整脈の苦しみから解放できるように努力していきたいと思います。

なお、頻脈性不整脈は、様子をみていいもの、薬を使用した方がいいもの、カテーテルで根治が望めるものなど様々です。お心当たりの方はご相談ください。

 

アブレーションの為に開発された、最先端の超低線量バイプレーンアンギオ装置 Artis Q.zen(2020年6月稼働)

新たなテクノロジーにより生み出されたフラットディテクタ(FD)がもたらす超低線量での検査。
アブレーションのための3Dガイディングアプリケーション,小児検査のためのフレキシブルなアームポジショニング。
そして,血管撮影装置の基本であり、画像作成の根幹をなすイメージングチェーンを一新し、高精度ハイパワーX線管が深いプロジェクションアングルでも、さまざまな体厚の被検者でも、透視や撮影で高いコントラストの画像を提供します。
特に長時間のX線透視を余儀なくされる心房細動アブレーション、そして 被検者被ばくに細心の注意を払う小児循環器検査で,真価を発揮します。

  • アブレーション、及び小児循環器の為に開発された最先端の装置となります。
  • 長時間のX線透視を余儀なくされるアブレーションにて超低線量での撮影が可能となります。
  • zero electronic noise FD(zen FD) 従来では描出不可能な超低線量での撮影、透視を可能とする新開発のディテクターです。(ノイズを限りなくゼロにすることにより今までとは次元の違う低線量撮影を可能とします)

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